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フィリピンの未来を左右する!? BBL法案とは何か

フィリピンでは現在BBL(Bangsamoro Basic Law)という法律案が話題を集めています。

あまりにも難しい法律案なので、今からフィリピンの歴史から紐解きながらこの法律案の背景を探って行きたいと思います。

それではこの法案に理解に必要不可欠な、現在のフィリピンの宗教事情について見て行きましょう。

現在、フィリピンでもっともメジャーな宗教は、ローマ・カトリック教徒です。
フィリピンは16世紀のスペインの侵略から、ローマ・カトリック信仰が盛んで、アジアで唯一のキリスト教国となっています。
現在、カトリックは人口の86%を占め、生活や国の文化の中にカトリックの思想が根付いています。
中にはペーパーの上だけカトリック教徒で、信仰心が薄い人もいますが、離婚、中絶が禁止されているなど、国の法律にも影響を与えています。

その他にも様々な種類のキリスト教を信仰している人がいて、キリスト教徒だけで国民の94%を占めます。

しかし、スペイン侵略の前、フィリピンの国民の多くが信仰していた宗教はキリスト教ではありませんでした。

その宗教は、イスラム教。

フィリピンの南には現在、世界最大のイスラム教国インドネシアがあります。

14世紀にはフィリピンにもイスラム教が広がってきて、島の各地でイスラム教が信仰されていました。

歴史的にフィリピンという国はマレー民族の多く住む地域でもあります。
タガログ語はマレー語由来でもあり、Mahalという単語は
マレー語でもタガログ語でも値段が高いという意味をさすように、
共通の単語は他にもいくつか存在します。

しかし、イスラム教をとことん嫌うのがかつてのスペイン。
彼らがフィリピンに到着したのはレコンキスタが終結したおよそ50年後。
レコンキスタとは、国土回復運動と訳されますが、実態はヨーロッパ大陸から、ムスリムを追い出すことでした。

当時、国がイスラム教徒によって占領されそうになったスペインの、イスラム教に対する対抗心は大変大きいものでした。

そのような背景から、スペインは当時フィリピンの至る所で見られたイスラム教とを排除して行きます。
まさにフィリピンにおけるレコンキスタです。
そうして、当時普及していたイスラーム教は衰退し、国はキリスト教化されてしまいました。

しかし、マイノリティーではありますが、フィリピンの南ルソン島にはいまもその名残があり、ムスリムが多数を占める地域は、長い間、政府と抗争を繰り広げて来ました。

このような抗争は何十年間も繰り広げられていた事には理由があります。イスラム教は来世への信仰があり、武力を用いて自身の正義を貫く事に何ら抵抗がありません。そのことが、日本とISISなどイスラム教武装勢力との対話を難しくしている原因にもなっているのです。

そのような中で提言されたのがこのBBL法案。

この法案は、この地域に住むムスリムに一定の自治を許すというもの。

今まで政府と抗争を繰り広げられていた地域だけあって、
この法案には平和への希望もありますが、
イスラム教を恐れる国民からは、不安の声も高まります。

現在この法案は議会で審議されていますが、今回実施された国民へのアンケートでは、賛否が綺麗に別れる結果となりました。

歴史的な問題を孕んでいて、国の行方を大きく左右しうるため、今後の議会の決断に注目が集まります。